Hatena::Grouperlkonig

::理性信仰


魔王城地下4880階
 

::理性信仰

 思い詰めた顔で地べたに座り込んだ彼女は、乾いた土にナイフを突き立てる。その音はざく、と聞こえる。

 

「私には……もう理性しかない……」

 

 刃先を土から抜き、目の高さまで持ち上げてまた突き下ろす。引き抜き、また突き下ろす。それを繰り返す。ざく、ざく、ざくと鳴る。

 

「理性が、私を救ってくれるんだ……理性が……理性だけが……」

 

 ざく、ざく、ざくと続く。彼女は次第に行動の繰り返しに没頭する。身体感覚はその連続した行為に占められるのみとなり、彼女はやがて思考の中に沈降する。

 

「この行動に意味はない……儀式ですらない。しかしこの行動に意味がないことを、私は理性によって認識している……。理性を働かせることが大事なんだ……。まずは理性……理性さえ掴んでいれば、自ずと思考はその先に進むはずなのだ……」

 

 ナイフの動きは続いている。しかし今や、彼女はほとんどそれを感覚していない。最低限の身体情報を脳に通わせることで、彼女はそれ以上の情報の氾濫を防いでいる。

 

「ざく……ざく……ざく……」

 

 ざく、ざく、ざくと行為は続く。理性だけが、身体と遮断されたところで回転している。